ハル
数歩後を遅れ気味に歩いていたサクがソウの隣に並ぶ。大分伸びたな、と頭を叩くと、サクは「んー」と間延びした声を発する。
「育ち盛りだからな、身体は」
その答えに苦笑した。つい、とサクの表情を辿れば、読み取れないような表情をしている。ソウは視線を逸らすと、今度はそれに視線を動かす。
「……いー天気だな」
ふ、と呟いた。ソウの言葉にサクが頷く。気持ちいいほどに蒼く澄み渡る空は、どこかあの日を彷彿とさせる。あの日は決して晴れていたわけではなくて、寧ろぱっとしないような曇り空だったのに。
そんなことを考え始めた自分に苦笑し、ソウは小さく吐息を吐く。どうした、とサクに問われたけれど、ソウはそれを笑って流した。
そんなことをしているうちに町に着く。山の中に暮らしているソウは、たまにこうして町へ必要なものを買いに来るのだ。
手始めに、とソウがサクを連れ足を運んだのは文房具屋。学校に行くことの出来ないハルに、ソウが勉強を教えている。これでいてソウは頭がいい。ハルも教えてみればそれなりに分かってくれるので、教えるのが楽しかったりしているソウ。ノートとシャーペンの芯を買って、次はドラッグストアに足を向ける。
買うものを全て買い、帰ろうと思った頃にはソウとサクの両手は荷物でいっぱいになっていた。
「帰るか、そろそろ」
「嗚呼、俺もう持てねえ」
「それは俺もだ」
二人で顔を見合わせながら言い合う。二週間に一度しか町に出ないため、帰り道はこうなるのが常。苦労しながら荷物を運んで一時間、漸く家に着くと二人は床に倒れこむ。
「疲れたー」
「同感だ」
とりあえず食料を仕舞おうと、ソウは立ち上がる。それを見て立ち上がったサクは、他のものを片付ける。量が半端無いので、これにもそれなりに時間がかかる。故に、この片付けが終わるまでがある種戦いなのだ。これが終わらない限り、一息は吐けない。