ストックホルム・シンドローム
「…あんな思いをするくらいなら、いっそ、殺された方がいい」
「…だから監禁したの?」
「…そうさ」
ふと、ベッドについた右手が沙奈の手錠をかけられた手に触れた。
…それは。
沙奈の体温、沙奈の指先は。
僕が一度だけ、チアキと手を繋いだ時よりも、ずっと。
「…沙奈は、温かいんだ」
「…よく言われるの。子供体温って」
…温かな体温が愛おしくて、僕は右手で、沙奈の左手を包み込む。
「…好きだよ。愛してる」
沙奈の顔は、心なしか赤い。
ずっと、沙奈と一緒にいたい。
大好きなんだ。
…愛してるんだ。
もう一生、この手を離したくはない。
君になら、殺されたっていい。
ねえ、沙奈。
好きだよ、ずっと。
僕は君を、愛してる。