ハートブレイカー
尊大な上から目線で言いきっても様になるのは、やっぱりこの人だからか。

「何があってもおまえであることに変わりはない。それに・・・」

私の頬を、彼が指の腹でそっとなでた。

「俺が全部受け止めてやる。だから怖がらなくていい。検査を受けろ」

触れられた頬が赤らむ。
全身にボッと熱が孕む。
胸がドキンと高鳴って、目はジンワリ潤んで・・・。

弱気全開。

そんなセリフを誰かに言われたのは、生まれて初めてで。
今ここで、こんなときに、しかもこの人に・・・まったく。
どこまでずるいのよ。

いろんな感情が一気にドッと押し寄せて、思わず両手をギュッとよじり合わせた。

「これは直哉にも関わることだぞ」
「わ、わかってる・・・」

そのとき医者が私たちのところへやってきた。

このタイミングは何。
まるで見計らったかのように。
まさか海堂さんとタッグ組んでたとか。
ありえそうで、ある意味怖い。

自分の薄ら寒い妄想に蓋をするように、私は背筋をピンと伸ばした。


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