ハートブレイカー
海堂さんは、約束どおりちゃんと来てくれた。
もちろん直哉を連れて。
私の顔を見るなり、「ママぁ!」と叫びながら駆け寄ってきた直哉を、私はしっかりと抱きとめた。

・・・そっか。 直哉はまだ3歳だよ。
強がってた部分もあったんだよね。
私が元気に(ベッドに寝ていたけど)生きてる姿を自分の目で見て、安心したんだろう。
直哉はおいおい泣きながら、これ以上近づけないというくらいまで私にくっついてきた。

「ママぁ、ママぁ、うっうっ・・・」
「ごめんね直哉。心配かけて。怖かったよね。ママを助けてくれてありがとう」

ギシッとベッドがきしむ音がした。
と思ったら、海堂さんがベッドに座っていた。
彼と私で直哉を挟むような形になった。
直哉を経由して、ムスクの香りがフワリと漂う。

「よくがんばったよな、直哉は」

彼は無骨な手で、直哉の頭を優しくなで続けた。
つい彼の大きな手に目が吸い寄せられる。

昨日はこの手が私の頭をなでてくれた・・・。

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