ハートブレイカー
「このくるまねー、パパといっしょにえらんだんだよ」
「えっ!」

ていうか、やっぱり?

これ、どう見ても新車にしか見えないし。
しかも真新しい・・・って。え?

「じゃ、昨日電話で話してた、“車買った”って・・・」
「これのことだが」

あ。おもちゃの車じゃあ、なかったんだ・・・ははっ。

「ぼくが、このいろがいいっていったんだよー」
「こういうのは男同士で行ったほうがいいからな」

あぁ、それが「男同士気が合う」って・・。

チャイルドシートの話で盛り上がっている男子たちを、私は遠目で見守った。
今の私の顔、引きつってるに違いない。
それとも疎外感にふててる?

「でもね、じょしゅせきには、まだのっちゃダメっていわれたー」
「ここに最初に座るのは、ママと相場が決まってるんだ」
「そんな相場決まってませんっ!」
「じゃあ俺のこだわりってことにしとけ」

また。
この人のポーカーフェイスが、何となくニヤついてるんだけど!

表情を垣間見せてることに驚きながら、なぜ癪に障るんだろう。
どこまで私はかわいくないんだろう。
何事も素直に喜べないんだろう。

この人に心を粉々に壊されたから?
・・・ううん。
もっと前から、私はかわいくなかったし、素直じゃなかった。

だって私は、何をやっても上手く行かない、望まれない子だったから。


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