ハートブレイカー
「顔は引っかくなよ」
「な・・・」
「昨日は救急車で運ばれて、今日は明るいうちから男連れ込むか。 姉ちゃん、意外とやり手なんだな。次は俺の相手してくれや」

セクハラ・・・親父・・・岸本ぉ!

私の眉間にグッとしわが寄る。
怒りで体が震えるなんて体験、初めてした。
それはどうでもいいとして。

セクハラ親父(きしもとさん)をキッと睨みつけようとしたら、彼にあごをつかまれた。

「おまえは俺だけ見てろ」
「ちょ・・そういうんじゃない!」
「分かってる。おまえがあんな男を相手にする必要はない」
「おいあんた。今俺のこと“あんな男”って言っただろ!聞こえてん・・・」
「こいつに触れてもいいのは俺だけだ」
「は?」

そうだよ。
「は?」だよ、今の発言は!

でも今は・・・何も言わないほうがいい。
だってこの人、何気に怒ってる。
切れ長の黒い目が、ギラッと光っている。
どことなく目つきも怖い。

< 126 / 223 >

この作品をシェア

pagetop