ハートブレイカー
「マナ!」
「え?あ、うわっ!」

車を降りてトランクを開けた途端、彼が鍵を放り投げてきた。
かろうじてキャッチできたことに、なぜかホッとする。
腰、引けちゃってるけど。

ドンくさい私は、昔から「受け取ること」が苦手だ。
物でも感情でも、いろいろ・・・。
何をやっても上手く受け取れなくて、そのたびに父を失望させてたっけ。

とりあえず彼を睨み見ると、両手に私と直哉の荷物を抱えている彼がニヤッと笑った。

ていうか、「マナ」って・・・。
なんでそんなに呼び名を考えつくのよ。それより。

「・・・今日仕事は」
「休んだ。俺がいなくても会社は回る」
「そう、ですか」
「おまえの鍵は後で渡す」
「ていうかここ・・・」
「俺んちだが。早く開けろ」
「あぁはい」

急かされて、つい流されるように、彼の鍵でドアを開けた。

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