ハートブレイカー
13
彼から怒りは感じない。
相変わらず飄々としたポーカーフェイスだ。
しかも私たちの間には、艶めいた空気が流れていない。
それより「氷室課長」と「浪川」の関係に、限りなく近い。

とにかく、こんな神経すり減らす時間は、サッサと終わらせたい。

「あの・・・いろいろとありがとうございました。直哉のこと、海堂さんのお母様にもお世話していただいて」
「困ったときはお互い様だろ」

彼の言い方に棘を感じるのは、私の思い過ごしであってほしい。

「昨日は直哉と話をした。おまえがスマホの使い方を教えたそうだな」
「あ・・はい。一応覚えておいたほうがいいかと思って」

直哉はまだ3歳の子どもだけど、私にとっては唯一頼れる存在でもある。
小さな体にはかなりの負担だろうけど、直哉には父親的役目も押しつけていた。

「私が動けないときや、助けを呼ぶときにだけ使うようにと言い聞かせて。一度しか教えてないんですけど、賢いんですよ、直哉は」
「ああ知ってる。俺に似たな」

う。この自信満々な言い方・・・。
でも事実だから言い返さないでおく。

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