ハートブレイカー
「おまえはご両親にも頼らず、ひとりで直哉を育ててくれたらしいな。そのがんばりは認める。だが直哉はもう二度と、あのボロいアパートには戻らせない」
「あ・・・」
「あの場所は治安が悪い。だから俺の息子をあんな場所に住ませない。それだけだ」

私は両手をギュッと握りしめた。
確かに、彼の言うとおりだ。
しかも彼は、あそこの住人であるセクハラ親父・岸本さんを見てしまったし。

華麗に打ち負かしたけど。

「でも・・・」
「幸い直哉はここを気に入ってる。俺も直哉と一緒に暮らすことに異存はない」
「そんな言い方・・・」

つい顔を上げて彼のポーカーフェイスを見たら、鋭い視線に射抜かれた。
やられた・・・けど怯むな、私!

「おまえに異存があろうが、俺は構わん。とにかく俺は、直哉を手放す気はない。つまり直哉は俺と一緒に暮らすというのが、これからの絶対条件だ」
「な・・・」

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