ハートブレイカー
分が悪いのは、完全に私のほうだ。
確かにこれから先、私ひとりで直哉を育てるには限界がある。
この人に直哉を託せば、直哉は・・・少なくともこれからは、経済的に困る状況に陥ることはない。
もう出口を探して迷路の中で頭を抱える必要はなくなる。

「もしおまえが直哉から離れたくないのなら、ここに住めばいい」

私は二の次ってわけか。
そりゃそうだ。
彼にとって私は、直哉の母親ってだけで・・・別にいなくてもいいんだもん。

病院で私に多少優しくしてくれたのは、私が倒れたせい。それだけ。
いくら他人に厳しい彼でも、体が弱ってる人を責めるような鬼畜野郎じゃない。

そのことを忘れてたからか、「私はいてもいなくても、どうでもいい」みたいなう彼の言い方に、正直こたえてしまった。

結局私は・・・私の存在は、その程度のものなんだ。
今までも、これからも、ずっと。
誰にとっても。

感情が現れてるかもしれない顔を見られたくなくて、私はまたうつむいた。


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