ハートブレイカー
「それでも急な変化に心がついてきていない。そんな直哉を、母親のおまえは見捨てるつもりなのか」
「そ、そんなことしない!」

ていうか、そんなもったいぶった言い方でネチ攻めするの、やめてくれませんか!

「まさかな」とほざく彼をキッと睨んだら、上から目線で睨み返された。
視線が絡み、バチバチと火花が散る。

上等! あなたからの挑戦、受けてたとうじゃないの!

「じゃあおまえはここに住むんだな?」
「す、住みますよっ!住めばいいんでしょっ!」
「まあいいだろう」

な、何、その言い方・・・。

「というより、俺は“住めない”“出て行く”なんて言葉を聞き入れるつもりはないしな」

このや・・・人。
「氷室課長」のときから、全っ然、変わってない!

「話は終わりだ」

彼がソファから立ち上がった。

「そういうわけで、直哉はまたうなされたり漏らすかもしれない。 おまえがそばにいることで安心させてやれ」
「あ・・・はい」

彼を見上げながらそう返事をすると、彼がフッと笑った。
直哉と同じ・・じゃなくて、直哉が似た顔が、少しだけ綻んだように見えた。

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