ハートブレイカー
結局私は、週明けから仕事に行かなかった。
というより、行けなかった。

まず、私の体。
薬を飲み始めたとはいえ、先生が言ったとおり、効果はすぐ現れない。
だから相変わらずめまいはするし、視界がかすむこともある。

「そんな体で仕事へ行くな。おまえがそこへ行かなくても代わりはすぐ見つかる。だが直哉の母親はおまえしかいない。だから今は体調を整えることを優先しろ」
「で、でも・・・」
「でも、じゃない。今まではそれでも仕事へ行かなければいけなかった。だが今は俺がいるだろ」
「だから・・・?」

彼が何を言いたいのか分からなくて、苛立ちが増す。
そんな思いをモロ顔に出しながら、彼を睨み見た。

「もっと俺を頼れ」

そうぶっきらぼうに彼は言って、私の頭にポンと触れると、「まったくマナ猫は」とつぶやきながら、スタスタと歩いて行ってしまった。

私は、触れられた頭に手を置いた。
別に痛かったわけじゃないけど・・・なぜか熱いなと思ってしまった。

そして、彼からそんなことを言われるとは、思ってもみなかった。

< 139 / 223 >

この作品をシェア

pagetop