ハートブレイカー
幸い仕事中、海堂本部長(あのひと)に会うことは滅多にない。
同じ営業部だけど、役員である彼には、彼専用の部屋がある。

それに彼には、彼専用の「秘書」もいる。

とにかく、仕事の内容は気に入っているし、営業2課の人たちは、 とても気さくで優しくて、一緒に仕事をしやすい。
締日前後の2・3日は残業するほど忙しいけど、ここに来てまだ1 ヶ月だし。
流れがつかめてないからだろう。

どっちにしても、残業が確定になれば、彼が直哉を迎えに行ってくれる。
無駄な残業をする気は、今も昔も全くないからしないけど、焦って残業をする必要がないことは、非常に助かる。

そう言った意味で、彼の存在は大きい。
私にとっても、直哉にとっても。

今まで私は、がむしゃらに、ひたすら突っ走っていた。
もちろん会社や託児所の人たちの協力もあって、私はひとりだったけど直哉を育てることができていた。
でも、いつもギリギリいっぱいで、限界を感じてて・・・。

海堂さんがいる今は、そこに余裕が出来た気がする。
直哉を育てることに関しては、もうひとりであれこれ悩む必要はないんだという安堵感もある。

だから「もっと俺を頼れ」と言われても・・・戸惑うだけだ。
私はもう十分すぎると自覚できるほど、彼を頼っていると思うから。


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