ハートブレイカー
「以上。覚えた?」
「え、あぁはい」

ちょうどお湯が沸いたので、三井さんが空のカップにお湯を注いで温める。

「全然聞いてなかったみたいだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫です」

ていうか、さっきの・・・。

「みなさんもだけど、特に本部長は好みがうるさいから、絶対間違えないでね」
「あ・・・はい」

今度はわざと「朔哉さん」って言わなかった。
それはどうでもいいとして。

「じゃあ私は行くわ。私のミネラルウォーターも忘れないでね」
「分かりました」
「普段はボケッとしてるのに、取り入ることは抜かりなくやって・・ ・」
「は?なに・・・きゃっ!」

なぜかこのときだけ、狭いキッチン内で三井さんとぶつかった。
その拍子に、カップに入れていたお湯が、私の左手にかかった。

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