ハートブレイカー
N社のエスプレッソが入った白いカップを、彼の前に置く。
悔しそうにしている三井さんの顔が、一瞬だけ見えた。
フンだ。こんな子供だましみたいな嘘ついても、私は騙されませ・・・。

ちょっといい気になっていた。
だからか、突然彼に左手首をつかまれて、心臓がドキンと跳ね上がった。

「その手はどうした」
「は・・・」

ちょっともう・・・倒れるかと思ったじゃないの!
心臓はいつも以上にドキドキうるさいし!
あぁ、お盆を机の上に置いといてよかった・・・。

「浪川。俺を見ろ」
「え?あの・・・」

彼が、つかんでいる私の左手首をグイと引っぱった。

「やけどか」
「あ・・・あ、そうですね、はい」

まずは飲み物を用意しないと、と思っていた私は、自分のやけどした左手はさておいたままだったと、今更気がついた。
そしてジンジンとした痛みが、またぶり返す。

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