ハートブレイカー
幸い、すぐキッチンに着いた。
彼が蛇口をひねる。
そして勢いよく水が流れる中に、私の左手をつっ込んだ。

痛みと冷たさに思わず手を引っ込めようとしたけど、彼がそれを許さなかった。

「・・・すみません」
「痛かったんだろ?泣きそうな顔で俺のこと見やがって」
「な・・・見てないっ!」
「もっと自分を大事にしろ」

・・・してる、もん。
それより、後ろから囲うように立って耳元で囁くの、やめてくれませんか!

「そう逆毛を立ててむくれるな。マナ猫」
「も・・・そんなこと・・・してない!」

今この人、どんな顔してるんだろう。
面白がった声に見合った顔をしてるのか。
飄々としたポーカーフェイスに、表情が表れているのか。
後ろをふり向いて見てみたい。

でもそれ以上に、真っ赤になってる顔を、この人に見られたくない。
ただでさえこんなにくっついてるんだから、私の体が震えてることはお見通しなはずだし。
ドキドキまで聞こえてたらどうしよう・・・。

悔しいから話題変えよう。

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