ハートブレイカー
「海堂さ・・」
「あいつがやったことだ。本人に後始末させるのは当然のことだろ」

いつの間にか彼は、私の髪に触れることを止めていた。
そして私を見る切れ長の黒い目は、とても真剣で・・・。

彼の思いに吸いこまれそう。

慌てて目をパチパチ瞬かせて、彼からの呪縛を解く。
すると、彼がフッと笑った。

「マナを傷つけさせるようなことは、もうさせない」
「ん・・・」

彼の指が、私の耳のすぐ後ろをスッとなでた。
そこからゾクッとした感覚が、全身に広がる。
思わず両手を握り合わせて、その感覚を外へ放り出した。

今、仕事中ですから!

でも、キッと睨んだ私の目に力が入らないのは仕方ない。
まだ術が解けてない状態で・・・。

「おまえもなるべく三井には近づくなよ」
「あ・・・・・・は、い」

耳元で囁かれた。
と思ったら、彼の背中に向かってつぶやくように返事をしていた。

「今日は定時に上がれるよう、仕事終わらせとけよ」
「・・・はい」

聞こえたかな、私の返事。
彼は前を見たまま右手を上げたから、聞こえてたよね、きっと。

それより、三井さんが絡んでたって、彼、気づいてたんだ。

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