ハートブレイカー
「俺が運転する」
「でも・・・」
「でも、じゃない。おまえは手を怪我してる。何度も言わせるな。それに、こんなところで同じ議論を繰り返しても、直哉を迎えに行く時間が遅くなるだけだ」

こんなことなら、一緒に行くって同意しなきゃよかった・・・。
ていうか、いちいち正論ぶつけないでよ! まったく。

私はフゥとため息をつくと、彼に運転席を譲った。





二人で直哉を保育園へ送ったことは、今まで2度ほどある。
でも一緒に迎えに行ったのは、今回が初めてだ。
そのせいか、私たちの姿を見た途端、直哉は飛び上がらんばかりに喜んだ。

直哉は「ママぁ!」と言いながら、なぜか彼のほうへジャンプした。
ガッシリ受け止めて、余裕で抱き上げることができるのは、私より彼だと直哉も知ってるからよね、きっと。
これが直哉なりに考えついた、二人いっぺんに独り占めする方法だったのかな。
そう思ったら、私の顔に笑みがこぼれた。

また「おまえは手を怪我してる」という理由で、直哉のシートベルトを締めるのは、彼がしてくれた。
この分だと、晩ごはんの料理もさせてくれない気が・・・。

私の予感は的中した。

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