ハートブレイカー
やけどした左手は、少し赤くなっているだけだ。
痛みもほとんどない。
それでもお風呂に入るときは、ちょっとだけ苦労した。
手を怪我するのは意外と不便だ。

自室で仕事をしていた英語で電話中の彼に「おやすみなさい」と言ったとき、「後で行く」と言われた。

彼の帰りが遅くて直哉に会えないとき、彼は私にその日の直哉のことを聞きに来る。
そのときの時間にもよるけど、私は使わせてもらっている部屋にいることが多い。
そこで仕事に関する勉強をしていたり、ベッドで本を読んでいたり。

話す時間は、マックス５分ほどで終わる。
だからというわけじゃないけど、彼が帰ってくるまで待っている。
リビングで待たないのは、「あなたの帰りを待ってたのよ」って感じが現れ過ぎてて嫌だから。
重すぎてお互い負担になりそうだし。

だから私は知っている。
ここで居候させてもらって１ヵ月半。
その間彼は、一度も朝帰りをしたことがない、ということを。

今日はなんだろ。 直哉のことじゃないから・・・やっぱりあれか。
三井さん。

< 159 / 223 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop