ハートブレイカー
最初のノック音が聞こえたとき、私はウトウトしていた。
寝ぼけていたのと、音にビクッとして、「はいどうぞ」と言えない・ ・・。
間髪入れず、今度は強めのノック音が聞こえてきた。

「あぁはい、どうぞ」
「遅くなって・・・寝てたのか。悪かったな」
「いえいえ。眠かったのに、ベッドで本を読んでた私が悪かったんです」

ていうか、彼はどれくらいでここに来たんだろう。

「思ったより時間かかって、ここに来るのが遅くなった」
「別にいいですよ」

時計を見ると、40分ほど経っていた。
どうりで転寝してしまったはずだ。

彼はごく当たり前に、ベッドの隅に腰かけた。
ギシッときしむ音が、何となく耳に響く。
ぼんやりそう思っていたら、彼の前に座る形にさせられていた。

「な・・あのっ!」
「わめくな。マッサージしてやる」
「や、別にいい・・・ぅ」

しまった。 かすかな「気持ちいい声」、聞かれた。
それを証拠に、彼が私の背後でフッと笑ったのが分かった。


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