ハートブレイカー
今は彼に後ろから手をつながれて。
やけどしている左手は、本当にそっと触れる程度で。

そんな彼の優しさにじぃんときて、目に涙がジワリと浮かんだ。

「や、辞めるんですか」
「かもしれない。だが今すぐというわけじゃない」
「・・・珍しく弱気ですね」
「そうだな」

「誰か・・・海堂さんが信頼できる人、社内にいますか」

お父様の会長は経営から退いているし、会社にもほとんど顔を出さない。実質隠居の身だ。
この人は孤独、というより、味方がいないんじゃないか。
そう思ったら、つながれた彼の手をそっと握り返していた。

私・・・私はあなたの味方、だから。

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