ハートブレイカー
彼が私の二の腕から肘にかけて、なぞるようになでた。
ゾクッとした感触が、そこから全身に駆け巡る。

「直哉の名前の由来は」
「素直な子に育ってほしいと思った。それと真っ直ぐな雨が降ってたのを見て。直哉が男の子だと分かったときから、あなたの字をひとつだけ・・・もらおうって」

せっかく泣き止んでいたのに、また目に涙がジワリと浮かんでしまった。

「あ、あなたの名前の由来は?」
「新月の日に生まれた」
「・・・それだけ?」
「ああ。それと“哉”という字は、父にもついている」
「あぁそうでしたね」

海堂商事に入ることになって、会社のホームページを見たとき、会長さんの名前を見て、「あ」と思ったんだっけ。

「マナは?」
「・・・さあ。父がつけたんじゃないっていうのは知ってるけど。由来は・・・聞いたことないです」

つい他人行儀な話口調になってしまうのは、両親の話はしたくないから。
彼もそれを察したのか、それ以上追及はしてこなかったことに感謝した。


< 187 / 223 >

この作品をシェア

pagetop