ハートブレイカー
「美しい愛」
「・・・はい?」
「そういう意味だろ、おまえの名前」
「漢字は・・・そうですね。完全に名前負け・・・ですけど・・・」

自分でも認める。
「愛」や「美」なんて言葉、私には似合わないって。

「美しく愛らしく、愛しい俺の彼女」

・・・泣き疲れて脱力したせいか、目が閉じていく。
規則正しい彼の鼓動が、私に安心感を与えてくれる・・・。

幻聴まで聞こえてきたし。

眠気でガクッとした。
咄嗟に彼にしがみつくように、ギュッと抱きつく。
ていうか、元々くっついてたから、もっとくっついた、みたいな・・ ・。

どっちにしても安心して、現実逃避まで始めた。
ああ眠い。

何となく体が倒れて、眠る格好になった気がした。
でも、彼がくっついているままだから、どうでもいい・・・あ。
私が彼にくっついてるのか。 どうでもいい。

彼が受け止めてくれるって分かってるから、どうでもいい・・・あ。
結局・・・朔哉さん、答えてくれなかった・・・。
彼女いるの・・・かって・・・。

「ここまでくれば、アホというより立派な鈍感だな」という彼のつぶやきは、眠った私には聞こえていなかった。
だけど、彼が優しく頭をなでてくれたのは・・・何となく分かった。
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