ハートブレイカー
「もっとまともな質問をしろ」
「ぐ・・・あ。会長さんがおっしゃっていた“今度は”って、どういう意味ですか」

なぜ今ここで、こういう質問タイムが繰り広げられてるのか・・・ 謎。
でも、彼のしかけに応じないと、ここから出してもらえそうにない。

「あれは・・・まあおまえほど鈍感な場合、ちゃんと言わないと、 いつまで経っても通じないままだからな」
「あの」

何て言われようなのよ、私は!

「そうむくれるな、マナ猫」
「じゃあそういうこと言わないで・・・」
「あのとき」

彼が不意に真顔になって、私を見た。
射抜くような視線にドキッとしたけど、目をそらすことはしなかった。

「父が倒れたと連絡が入った。幸い大事には至らなかったが、仕事は退くことになった。俺はあと2年は外で修行をしようと思っていたが、そういうわけで、海堂商事へ戻れと言われた」

事実を淡々と述べる声はとても静かで、飄々としたポーカーフェイスに表情はない。

< 207 / 223 >

この作品をシェア

pagetop