ハートブレイカー
「俺が直哉のことを役員に公言したことで、もしかしたら、自分も正則の子どもを妊娠すれば、愛人から妻に昇格できるかもしれないと、三井は思ったのかもしれない」
「もしかして、それはあなたの計算、だったりして・・・」

私のつぶやきに、彼はフッと笑った。
だからそれ、同意ですか、それとも反論ですか。

「三井が何をどう思うかまで、俺は責任を持つ気はない。逆に言えば、あいつがどう思うか知ったことじゃない。俺にとって三井はその程度の存在だ」
「確かに・・・そうだけど」

正論だから言い返せない。
でも言い返す気は、私もない。

「あいつは今回が2度目の妊娠だ。最初は正則に黙って中絶していた。あいつも知っていたんだ。正則は認知しないと。それでも俺が直哉を即認知したことで、今度は大丈夫と思ったのかもしれないな。 同じ海堂の男でも、俺は正則じゃないし、正則は俺じゃない。まったく、勘違いもはなはだしい」

やっぱりこの人を敵に回すと、とんでもなく恐ろしい・・・。

「とにかく、あいつは危険な賭けに出て負けた。そして正則も負けた。正則は離婚する気はないらしいが、愛人が妊娠した上に、文無しに近い状態になるからな。和子さんから愛想を尽かされるかもしれない。ま、やつらがどうなろうと俺は興味ないが」

かくして、彼が海堂商事の社長になることに、満場一致で可決された。

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