ハートブレイカー
途端にその場が静まり、ピンとした緊張感が漂う。
自然と彼に注目が集まったところで、彼が話を始めた。

「みんなもすでに知っていると思うが、私が今日から海堂商事の社長に就任した。来月の株主総会まで、営業本部長も兼任する。突然の交代劇に、みんなも動揺しているかもしれない。だが、今こそみんなの力を貸してほしい」

そう彼が言うと、どこからともなく拍手が起こり、それは全員に広がった。
みんな、「この人についていこう」という顔をしている。
やっぱり彼はリーダーとして、上に立つべき人なんだ。

そのとき彼と目が合った。
あ。何かいやーな予感・・・。

「それで、だ。これから人事も変わるだろう。俺の秘書をしていた三井も退職することになったし」

お金やプレゼントを受け取っていたから、その「責任」を取らなきゃいけないのか。
妊娠している身で、しかも相手に拒絶されて、職も失って。
過去の私と状況は似ているけど、心理的な打撃は、彼女のほうが大きいだろうな・・・。


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