ハートブレイカー
エレベーターに乗ると、やっと彼の視線を感じなくなった。
そして海堂商事の立派な自社ビルから出ると、私はようやく緊張を解くことができた。

フーッと安堵の息を吐く。
まさかこんな形で彼と再会するとは思ってなかったけど・・・よくやった、私。

KO寸前のヨレヨレボクサーになった心境だけど、とりあえず私は今、自力で立っている。それが重要だ。
仕事のことは・・・あぁ、お兄さん、ごめんなさい。
会社に泥を塗るようなマネしちゃって。
その上、他の会社紹介してくださいって、図々しいお願いしないと。

私と息子は生きていけないから。

うつむいていた私は、また顔を上げると、一歩、また一歩と歩き始 めた。
流れ出る涙を、左手でふきながら。

毅然であれ。 誇りを持て。
大丈夫、大丈夫。

私は・・・私と直哉は生きていける。


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