ハートブレイカー
「じゃあお母さんが新幹線の本借りてくるよ」
「ほんと?やったあ!のぞみとー、こだまとー、それからあさひと ー・・・」
覚えたての名称を言いながら、小さな手の指を折る直哉は、とても賢いと思う。
物覚えがいいというか、記憶力がいいというか。
言葉を話し始めたのも1歳になる直前からだったし。
賢いのは父親譲りだろうか。
それとも、妊娠中から本を読み聞かせていたおかげかな。
あのときから私にとって唯一の話し相手は、この子しかいないから。
もちろん、本を買う余裕なんてないから、我が家ではいつも図書館で借りている。
リクエストを出しておけば、可能な限り取り寄せてくれるし。
図書館を侮るなかれ、だ。
あ、図書館で思い出した。本の返却、行かないと。
現実逃避じゃないけど、そんなことを思いながら鍵を開けてたせいか、注意力は散漫だった。
だからセクハラ親父・岸本さんが、近すぎるほど近くにいたことに気づくのが、少し遅れた。
「よぉ姉ちゃん。今帰りか」
「わっ!あ、あの・・・」
う。酒くさー。
ていうか、それが臭うほど、この人は私たちの近くにいる!
やばい、油断した。
「ほんと?やったあ!のぞみとー、こだまとー、それからあさひと ー・・・」
覚えたての名称を言いながら、小さな手の指を折る直哉は、とても賢いと思う。
物覚えがいいというか、記憶力がいいというか。
言葉を話し始めたのも1歳になる直前からだったし。
賢いのは父親譲りだろうか。
それとも、妊娠中から本を読み聞かせていたおかげかな。
あのときから私にとって唯一の話し相手は、この子しかいないから。
もちろん、本を買う余裕なんてないから、我が家ではいつも図書館で借りている。
リクエストを出しておけば、可能な限り取り寄せてくれるし。
図書館を侮るなかれ、だ。
あ、図書館で思い出した。本の返却、行かないと。
現実逃避じゃないけど、そんなことを思いながら鍵を開けてたせいか、注意力は散漫だった。
だからセクハラ親父・岸本さんが、近すぎるほど近くにいたことに気づくのが、少し遅れた。
「よぉ姉ちゃん。今帰りか」
「わっ!あ、あの・・・」
う。酒くさー。
ていうか、それが臭うほど、この人は私たちの近くにいる!
やばい、油断した。