ハートブレイカー
あどけない寝顔を見ながら、柔らかな黒髪をそっとなでる。
可愛い。

私の両親は、この子の存在を知らない。
言ってないから。

もし私が、「直哉のためにお金を貸してほしい」と頼んだら・・・ お父さんは貸してくれただろうか。
私的に分析すると、貸してくれる可能性は1割未満だ。
子どもがいて、しかも父親がいないということで、また私を出来損ない呼ばわりして、「誰が貸すか!」と一喝して終わりだろう。

やっぱり言わなくてよかったんだ。
それにあの人のことだ。
もしかしたら、直哉にも同じような暴言吐いていたかもしれない。
だから直哉を会わせなくて・・・よかったんだ。

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