ハートブレイカー
腕を組んで仁王立ちをしている彼の薄い唇が、フッと上向いた。
そして面白がるようなニヤケ顔になる。

「・・・いいだろう。では浪川」

あ。やっぱり呼び捨てですか・・・。
まあ、いいけど!

「海堂商事(うち)を蹴った後の就職先は決まっているのか?」
「まだです。御社へはキチンとお断りを入れた後、紹介をしてもらう手はずになっています」

そうだよね?お兄さん。
とりあえず今は、そういうことにしておこう。

「なるほど。おまえにとって悪くない条件を出したつもりだが」
「他に適任者がいらっしゃる・・」
「おまえが一番適任だと思ったから採用を決めた。それともおまえはうち以上に条件が良い会社に就けるのか?」
「御社にとって一番の適任者であれば、簡単じゃないですか?」

だから私! 彼を挑発するような言い方をしない!
落ち着け、落ち着け私・・・。

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