ハートブレイカー
でも私にとっては、単に予想外の出来事でしかない。
避妊はちゃんとした・・・と思うけど、それでもできたんだ。
だから私はこの子を生む。

私ひとりくらい、この子を望んでもいいじゃない。

もう迷いがなくなったと分かったのは、皮肉にもさっきの車のクラ クションだった。
轢かれるほどの至近距離ではなかったのに、私は、無意識におなかに両手を当てていた。

優しく、そっと。でも確実に。
そこだけは守らなくてはという一心で。
これが母性、だよね?

右には確か、不動産屋があったはず。

私は左手でおなかを一撫でして微笑むと、右に向かって歩き始めた。
いつの間にか流れていた涙を、左手でぬぐいながら。

今日は金曜日。
この週末の間に、全て整えよう。

新しく生きていくステージを。

これからは、私ひとりで・・ううん、赤ちゃんと一緒に、この子と 一緒に生きていく。
私はもうひとりじゃない。

これから、ずっと。


< 8 / 223 >

この作品をシェア

pagetop