ハートブレイカー

「では息子も一緒に連れて行ってください。私は東慈恵へ直接行きます」
「分かりました。息子さんには助手席に乗ってもらいますが、この時点でお電話は切らせていただきます。医療器具がありますので、 車内では通話禁止なんです。ま、それを抜きにしても、車内での通話は禁止なんですが」

俺が今、運転しながら「通話中」だということを、やんわり指摘しておかないと、救急隊員の面子に関わるもんな。

「分かってます。お手数かけます。私もすぐ行きますので」
「はい。浪川さんは救急病棟へ搬送されますので。受付でお聞きください」
「ありがとうございます。ではよろしくお願いします」

スマホを切って、気持ちだけ脱力した。
愛美は無事。それが重要だ。

運転に集中しろ、と自分に言い聞かせながら、俺は東慈恵病院へと車を飛ばした。