秒針のとまった世界で
二人してフラれて、互いに人のせいにした。

だけど僕は、フラれてホッとした。多分、陽司も。

僕らの関係に溝が出来るんじゃないかって心配したからだ。

おまえはいい男だ。互いを褒めあって、気持ち悪いって言いながら笑った。

そんなことが楽しかった。

中学生になり、性への意識が高まった。

女性の体の仕組みを聞くだけでワクワクした。

保健の授業で顔を赤らめていたのは、僕らだけじゃないはずだ。

帰り道、おまえさっきの保健の時間、顔真っ赤になってたぞ。

おまえこそ。

うるせーよ。

なぁ俺らって彼女出来るのかな。

そのうち出来んだろ。

そうかな。

思春期、早いやつならもう恋人がいた。

本当に好きになっているのかどうかなんて怪しいものだが、恋人がいるだけで大人ってイメージが強くなっていた僕らは、彼女という存在に憧れつつ、内心焦っていた。

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