秒針のとまった世界で
思春期の僕らにとって惚気話はどうでもよかった。

性への憧れ。
やったのかやってないのか、それだけが気になった。

もしやったとしたなら、気持ちいいものなのか、どういう感じなのか、そこにしか興味はなかった。

そんな僕らに彼女なんて出来るはずもなく、中学を終えた。

先に彼女が出来たのは陽司だった。高校に入ったとき、部活の先輩と付き合った。

僕も同じ部活で憧れていた先輩だったために、ショックは大きかった。

だけど陽司のキモチを知ったときに決めたんだ。
この思いは伏せておこうと。

だけど、多分陽司は僕が先輩に惚れていたことを知っていた。

だからだろう。僕の前で決して惚気話をしなかった。

こんなに気が利くいいやつは他に知らない。

ありがとうなんて言えなかったが、二人を心から応援すると誓った。
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表紙・目次

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