秒針のとまった世界で
夜が深くなっていく中で目の前には時計が現れた。

触れることの出来ない時計は、カチカチと音をたてて僕を急かす。

未来へ行かせようと必死なようだ。

だけど、そうはいかない。

未来になんて興味がない。

僕は過去にいたい。

願いが通じたのか、時計は逆周りをして過去に戻る。

映画のように大きな画面が目の前にでてきた。

蘇る想い出の中に陽司がいない日はない。

過去は一瞬で終わり、駅で陽司が倒れているシーンで映像が止まる。


時計の秒針すら止まっている。呆然と立ち尽くす僕の周りは真っ暗で、心まで失いそうだ。

早く次へ進んでくれと願ったが、時計は止まったままだ。

動かない時計にいらつき触れようと手をのばしても、やはり触れることはできなかった。
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