秒針のとまった世界で
一歩前へ進む度に恐怖が込み上げる。

一歩、また一歩。
男との距離が10数メートルになったとき、男も僕のほうへ一歩ずつ着実に向かって来た。

徐々に早足になり、サバイバルナイフを振りかぶる。
恐怖のあまり、僕の足は固まった。

男の叫び声とともに振り下ろされたサバイバルナイフが、僕の脳天へ向かってくる。

ほんの一瞬の出来事が、途方もなく永い。

よけることすら容易に思えてしまうほどに。

だけど、実際はそんなにあまいものではなく首をそらし、腕で防ぐことしか出来なかった。

激痛が迸る。

腕を深く斬られた。
たじろんでいるところに、追い討ちをするかのように、腹を刺された。

血が無秩序に流れていく。

意識は遠退き、気を失った。

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