秒針のとまった世界で
ドクン…ドクン…

鼓動が響く。
胸の五月蝿さにいらつきを覚え、目をさます。

真っ白な空にゆらゆら揺れるカーテン。
静まり返った空気に消毒液の匂い。

病院だ。

周りには誰もいないと思って寂しくなった。

だが、一人だけいた。

カーテンの奥の隙間から見え隠れする寝そべったまま動かない人。

まさか……

「陽司…?陽司なのか…?」

起き上がろうとするが、体が言う事をきかない。

「おい!陽司!!陽司だろ!?」

不安で胸が押さえ付けられているようだ。

嫌な予感が頭から離れない。

点滴を引き抜き、傷口をおさえながら、陽司らしき人影に向かう。

やはり陽司だった。

「うぉい!陽司!目を開けろよ。呼んでんだろが。なぁ…。」

ぴくりとも動かない。

「っ…うっ――!!」

声にもならず陽司のベッドを濡らす。

5月5日、15時30分のことだった。

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