イデア
「シッ!!」

あ…そうだった。
ここは図書館だ。

気まずそうに口に人差し指をあて,キョロキョロと周りを気にする彼に,私はごめんと小さく謝った。


「で,これを訳すの…?」


耳元で囁いた彼の声は,息で掠れている。
そして,うん,と返す私の耳に彼は顔を近づけていく。

「I am found of you...
これは『be fond of』で一つの連語なんだ。つまり…」




彼が耳元で小さく呟いた。


「『俺はお前が好きだ』」
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