イデア
もうその後の事なんて覚えてない。



私から体を離した甫芽は,
ごめん,とバツが悪そうに目も合わせずに言った。


私はと言うと…

荷物を早々にまとめて,用事合ったんだ,なんて最もらしい理由付けて逃げ帰ってる。



息も荒く,屋上迄の長い長い階段を駆け上がった。


紅潮した頬に気も止めず,最上階まで登り詰める。







-----勢い良く屋上の扉を開いた。


入道雲の直ぐ下でヘナヘナと両膝をつく。


ぺしゃんと床に座り,高ぶる息と鼓動を止めようともず,空を見上げた。


そして両手で,唇に触れてみる。




熱いのは,太陽のせいじゃなかった。
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