イデア
第七章『汀紗の秘密』
八月も末。
いつもの場所に,甫芽が来た。



一人だった。




いつも一緒に来る筈の汀紗を心配すると同時に,心の何処かが彼女の不在を喜んだ。


そんな自分に自己嫌悪する。







何も言わず早足で歩く甫芽は,私の前の席に腰掛けた。
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