イデア
「甫芽…どしたの?改まって…?」



図書室の外に出た私は,甫芽の後ろ姿に問い掛ける。


「…比奈とこうして話すの久し振りだな。」


甫芽はこちらを向きながら言った。



…そういえばそうかも。
最近は汀紗と三人だったし。



少し胸が高鳴る。
相反して,汀紗を思う心が痛んだ。



うん,と頷く私に,甫芽が言う。




「暫くはこうなるだろうな」



「え…?それってどう言う…?」





「汀紗は」










甫芽の息の吸う音が聞こえた。

掠れた音だった。










「病気なんだ」
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