イデア
「汀紗,今入院してる」



「え」



汀紗の存在を知ったあの日みたい。


目の前が真っ白になった。

何も考えられない。
足下が覚束ない。

経つことすら儘なら無い。




ゆっくり,甫芽は続ける。





「原因不明の病気なんだ」




「うん」


私は『うん』としか言えなかった。
最も単純で明快な答え。



「直るかどうかも解らない。」



「うん」




「元気な日は有る。でも今年も,まだ数日しか学校に来ていない。」




「うん」




「あいつ元気な日全部,比奈に会いに来てたんだ。」










「うん…」








涙が零れた。

こんな汚い,醜い私に,なぜ汀紗は会いに来るの。


甫芽の為に汀紗を利用した,こんな私なんかが。



汀紗。
ごめん汀紗。
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