イデア
暫く沈黙が流れた。



病室は真っ白。

枕もシーツも真っ白で,そこに横たわる汀紗の肌も真っ白で。
そんな汀紗は消え入りそうなくらい弱々しかった。




『汀紗は街を歩く事すら出来ない』


さっきの甫芽の言葉。


…汀紗は私に初めて会った日,街に連れていってくれた。

無理,してたんだ…。




汀紗の整った横顔を見る。
美しい横顔もどこか少し,疲れているように見えた。





「ねえ」




先に沈黙を破ったのは汀紗。
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