イデア
第九章『悲しみの始まり』
ふたつの陰が見えたんだ。
曲がり角の先…
人の集まりにくい階段の裏
片方の陰が
小さく息を漏らした
濡れたような声。
もう片方が名前を呼んだ。
「汀紗…」
曲がり角の先…
人の集まりにくい階段の裏
片方の陰が
小さく息を漏らした
濡れたような声。
もう片方が名前を呼んだ。
「汀紗…」