光の少女Ⅱ【救出編】
「誰!?」
気配を感じたらしい聖が、花音に剣を向けたまま、声を上げる。
聞こえてきた足音に花音が視線だけを向けると、学生服姿の少年が少し距離をおいて立ち止まった。
「月城君!?」
それがクラスメイトである月城蒼だと気付いて、目を見開く。
「あら?知り合いですか?・・・悪いことは言わないわ。すぐに此処から去りなさい」
「それは出来ないな。俺は、そいつを助けるつもりで、此処に来たんだから」
蒼の言葉に聖が目を細め、次に笑い始めた。
「ふふふ、この子を助けるですって?・・・何も知らない、何の力もない、この世界の人間が、でしゃばった真似しないで!」
「っ・・・、駄目!逃げて!」
花音は叫んだが、蒼は逃げようとせず、聖の放った陰が彼をのみ込んだ。
「あっ・・・!」
「ふふ、馬鹿な人・・・」
そう聖が呟いた時、再び周りの温度が下がった気がした。
そのせいか、陰の動きが鈍くなり、聖が怪訝な表情になる。
「何・・・?」
聖が短く呟いた時、先程蒼をのみ込んだ陰の動きが完全に止まり、次の瞬間、その周りを氷が覆い尽くし、そのまま砕け散る。
かと思うと、気付いた時には聖の首に氷で作られた剣が突き付けられていた。
「悪いな。・・・俺も元々は〈この世界〉の人間じゃないんだよ。さぁ、そいつを解放してもらおうか」
「くっ・・・。今回は退くわ」
蒼の言葉に聖は悔しそうに剣を引くと、姿を消した。