誰よりも、君が好き
お前はその手を降ろして、胸の方へと持っていった。
そして
俺は決心をしたんだ。
「……もう、下僕じゃなくていいよ」
顔を上げると、驚いて目を見開くお前の姿があった。
「お前だって、嫌だったんだろ?
解放してやるっつってんだから、それでいいだろ?
…今後、俺には関わるな。
じゃあな、ハナサキさん」
ドクドクとなりやまぬ鼓動を無視して、
お前の前から去っていく。
「俺のこと、"匠くん"って呼ぶなよ」
…俺は決めたんだ。
もう、お前と関わらない。
好きだという気持ちを消す
―――もう恋をしないんだと誓ったあの日の様に
俺の頬には涙が伝っていった。
「……悠、ごめん……」
俺の声が、廊下に響く。
ひとつしかない足音に、懐かしい寂しさを感じた。