誰よりも、君が好き
すぅっと息を吸い込む。
緊張、してる。
でも、言わなきゃ。
「匠くんは、自分のことを“人殺し”って言ったけど、そんなのは絶対に違うよ。
匠くんは夏希さんを殺してなんかいないし、誰も匠くんのことそんな風に思ってないよ」
「…分かったような口聞くなよ」
匠くんの呟きは、全部聞こえなかったふりをする。
「確かに私は、今さっき匠くんに話を聞いたばっかりだし 直接現場を見た訳じゃなければ、匠くんからの情報以外に特別ななにかを知ってるわけでもない。
…でも、よく考えてみてよ。
匠くんと夏希さんは、好き同士だったんでしょ? 夏希さんはただ、匠くんを守りたかったんだよ。
匠くんだって言ってたじゃん。 『夏希を守ろうと思った』って。 …二人して、同じこと考えてたってことでしょ? 超おあいこじゃん。」
私がここまで言うと、匠くんはちょっと考えるようにしてからハッとしたようになる。
…匠くん、頭いいから、話の呑み込みも早いね。
「自分がもし夏希さんの立場の方だったらって、考えたことあった?
なんの為に夏希さんが匠くんのこと守ったのかって、考えたことあった?
…夏希さんは、匠くんに責任を追ってもらいたいから亡くなっていったんじゃない。 匠くんを庇ったわけじゃない。 ……匠くんのことが好きだから、好きな人を守りたいから自分を犠牲にしたんだよ。」