誰よりも、君が好き



「え……」




言葉が、なにも出てこない。





優しい、結城くん。



それだけを知っていた私だから。





こんなにも怖い雰囲気を纏っているなんて…







そう思っても、私は抱きしめた彼の腕をがっしりと掴んで離さなかった。






「嫌だ。離さない!!」


「やめろっつってんじゃん。
 分かんないの?お前。」




低い声の彼にも堪える。




「…私、結城くんが優しいの知ってるよ!!

 そんな低い声で脅そうとしても、無駄なんだから!!

 絶対、離さない。
 私はどんな結城くんも、好きだから。」








勇気をだして振り絞るようにだしたその声は、

少しだけ震えていた。




…やっぱり、ちょっと怖い、かな。








すると。






「……思い出した。」







彼の、小さく呟いた声が聞こえた。





< 36 / 275 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop