誰よりも、君が好き
「ねぇ」
「なに」
「ありがとう」
「それもう何回も聞いたから」
「…そっか」
今私は家に向かっている。
けど、それはいつもとはちがくて、隣には匠くんがいる。
お昼はずっと前を歩いていたのに、今は私に合わせてゆっくりと隣を歩いてくれている。
嬉しくて、照れ臭くて、なんだか上手く話すこともできない。
…こんなに尽くしてもらってて、私は本当に匠くんにとって”下僕”なのかな。
不思議な気分。
…まぁ、帰りは始めから今も、匠くんの荷物を持っているのは私なんだけど。
「なんかよう?」
「えっ」
「いや、だってずっとこっち見てるから」
そ、そんなに見てたのかなっ!?
…でも、なんか匠くんがここまでしてくれるのが以外で。
…じゃなくて
「私はただ、匠くんに見とれてただけだよっ」