誰よりも、君が好き
前、私が泣いたあの時から。
イジワルだった匠くんなんて忘れちゃうくらいに優しかった。
口は悪くて、初めてあったときのイメージとは違ったけど、確かな優しさを感じた。
…分かんない。
考えれば考えるほどに。
…分かんない。
匠くんの本当の心が。
それを知りたいって、強く思うのに。
この間、私が匠くんに猫かぶり件を聞いて睨まれちゃったこと、まだ覚えてる。
何度もあんな風にされたら、きっと、絶対。
私の弱い心は折れちゃうと思うから。
怖くなっちゃう。
どうしても。
「…悠?聞いてる?」
「えっ!?な、なに話してた?」
「もうー!!ちゃんと聞いてて?」
「ごめんごめん!!」
私の意識があかりと里奈の会話の方に傾いたとき、横でチラッと見えたのは、隼人くんの不安そうな顔。
会話に入ってこないのは、私のことを気遣ってくれているからかもしれない。
私はせっかく座り直した椅子から立ち上がり、少し先に立っている隼人くんのもとに歩いた。